私のようやく出て来た挨拶の言葉は、彼らの友人達の声によって志半ばで消えていった。まぁ無視したのだと思われなければそれでいい。
「昨日話して。良い人だった」
「え!!」
「…なんで吉岡さんが驚くの?」
「あ、いや、だって私の印象悪いのかなって、思ってたから…」
「いや?だいぶ良かったけど」
唖然とする私の周りでは、「それってどういう事?」やら、「意味深!」やらと野次馬の声が飛び交っていたけれど、私自身ですらその声に同意せざるを得なかった。
一体どういう事だろう。本当意味深…というか、考えが読めない…
「え、何?マジで昨日何があった訳?」という瀬良君の言葉に、「話しただけだけど」なんて、それこそ他に何があるの?とでも言いたげな返事を返す三好君を見て、あぁ、このテンションが平常なんだと理解した。だとしても考えは読めないけれど。
ふと、チラリと瀬良君の様子を盗み見てみた。すると彼もこちらを見ていて、バッチリ目が合って驚いた。ニコリと笑いもせず、彼は真っ直ぐ私を見て尋ねた。
「吉岡さんはどう思ったの?」
…それはとても平坦な声で、無表情にも真剣にも見えるその表情からも、私には彼の問う真意が掴めなかった。
「あーそれ俺も聞きたい!」
「この返答大事よー吉岡さーん」
つい口籠ってしまった私がもたもたしているうちに野次も更に重なって、それがまたわらわらと人を集めてしまい、返事はまだかと、その場に煩わしく感じる雰囲気が漂い始めた、ちょうどその時だった。
「セーフ!あ、由梨ちゃんおはよう!」
飛び込んできた朋花ちゃんの声と共にチャイムが鳴り始め、何事も無かったかのように皆各々の席へと戻っていった。
「おはよう、朋花ちゃん」
そしてありがとうと、心の中でお礼を言った。



