大事にされたいのは君


今日も瀬良君と私は例の屋上前の階段でお昼を食べていた。大会が終わるまでは朋花ちゃんの昼のミーティングが増えるとの事で、ガッカリしながら迎えた昼休み。一人でコソコソと向かうと既に瀬良君がスタンバっていた、みたいな事が続き、私が一人の時はここに集まる習慣が今ではすっかり出来ていた。

今日も今日とて彼は隣でやられたやられたとうるさい…。最近彼は、口を開けばやられたと言ってる気がする。そんなに嫌だったのかと始めこそ思ったけれど、その時の彼の満足そうな表情を見たら、あぁ、嬉しかったんだなと諦めの溜め息をつくしか私には出来なかった。
何を諦めるかって?そりゃあこの何度も掘り返されてその度に自分の行いの恥ずかしさと向き合う現実から逃げ出す事を、だ。つまり恥ずかしいからもうやめて、を言えない現実を受け入れるという事。だって言った所でやめてくれない、やめてくれなかった。

「どうせなら彼女になってくれてもいいのになー」

なんて大きめの声で呟く瀬良君を、私は何を言ってるんだと横目で睨んだ。

「好きになられたら嫌なくせに、彼女になって欲しいなんて軽々しく言わないで下さい」

「でももともと俺は恋愛的なものを望んでた訳だし…ほら、本当の恋的な?」

「違うでしょ。君は結局友達で満たされないから恋愛ならって思ってただけでしょ。私が私のまま君の気持ちに応えるんじゃダメなの?」

「彼女でも親友でも無いのに君の事を一番大事思ってくれる人なんて、その方がよっぽど君の気持ちを満たせると思うんだけど」と、私が付け足すと、彼はパチリと大きく瞬きをした後、ガバッと天を仰ぐように真上を見上げた。

「吉岡さん、そういう所…!」

「え?」

「俺をそんなに喜ばしてどうすんの…!俺はここに来るくらいしかしてない!」

「いや、それで十分だよ。むしろそれもそんなにしなくても、別に…」

「なんで!!」