一番大事にするよ、なんて、今思えばとても恥ずかしい宣言だったはずなのに、何故か私は宣言した事実にとても満足していた。
別に彼と何かの関係を持ちたかった訳では無いし、深い関係になるつもりだってこれっぽっちも無かった。彼の行動に振り回される事にもウンザリしていた訳だし、私には関係無い世界に居てくれて構わない存在だった…はずなのに。それでも、彼には格好悪い所を見せたく無いだとか、いつも彼の周りの友達の事を思い浮かべてしまうだとか、もしかしたら私は始めからどこかで理由を探していたのかもしれないと、最近のスッキリした頭では思うようになった。
理由。それは彼の傍に居る理由。彼からの好意を受け取る理由。その時が来た時、傷つかず後悔しない理由ーー…あげればキリが無いそれらにハマる言葉は、彼に見えた本心からたった一つで事足りた。
私が彼の寂しさを埋めてあげたい。
誰も知らない本音を知ったからには放っておけない、私しか居ない、という気持ちが背中を押して、最終的に、私がしてあげたい、で決着がついた。
今までは彼の言う事なす事のどこまでが本当でどこまでが嘘なのかハッキリしないのが嫌だった。ただ弄ばれているだけで、暇つぶしのオモチャのような扱いを受けているのだと思っていた。それが全て勘違いだったのだと、彼は本当に私を求めてくれていたのだと分かったのだから、あんな言葉の一つや二つ出てしまう。恥ずかしくなんてこれっぽっちもない。
「でもさ、あの時の吉岡さんのセリフ!『君を一番大事にする人になるよ』ってどこの王子様だよな!マジでやられた!」
「……」
「リアルでこんなん言う奴居んのな!しかも女子!しかも超真面目!マジやられた!」
「……」
「こんなガッツリ心掴まれちゃったの初めて。これが胸キュンかと17年目にしてようやく理解したから…やられた…」
「……」
前言撤回。やっぱり恥ずかしい。



