大事にされたいのは君


…だとしたら一体、誰が彼の寂しさに気づいてくれるのだろう。彼に求める彼らには、それ以上に瀬良君の欲しいものを返すつもりがあるのだろうか。

「前に君は誰かの一番になりたいって言ってたけど、友達では満足出来ないって言ってたよね」

「え?あ、うん。そうだね」

「それはさ、君の周りの友達達は、君が満足出来る程大事にしてくれないって事?だから恋愛に求めてるって事?」

「……分かんない。周りは大事にしてくれてると思う、分かってる、友達の範囲では。でも決定的な何かが足りなくて…って、いや、違う。本当は充分なんだと思う。求め過ぎてるんだと思う。多分俺が寂しいって感じやすいってゆーか、ほら、俺って自分勝手だし…好かれたら好かれたで上手く行かないのになんだよって俺も思うし…なんつーかあれだ、欲しがり?」

「どこのジャイアンだって話だ」なんて言って、瀬良君は笑った。誤魔化すように笑った。明るい空気で無かった事にしようとして…でも無かった事になんてするつもりは無い。これはきっと、所謂彼のカッコ悪い部分。私に見せるつもりの無かった、こぼれ落ちた、“誰かの一番になりたい”の奥の部分。

カチッと、何かがハマる音がした。

「私がなるよ」

「……え?」

「私が、君を一番大事にする人になるよ」

驚きのあまり固まる瀬良君をよそに、私はここに宣言した。それが正しいと何故か私はこの時確信を持っていて、口に出したらとてもスッキリと軽くなっていた。なんでも出来てなんでも持っているように見えるこの人の、優しくて臆病な部分をなんとかしてあげたいと、心から思った。それを彼が私に求めてくれるなら、応えてあげたい。最後に痛い目をみるだとか、好きになったらいけない事実だとか、そんな事はもうどうでも良い。

私がやりたいから、それでいい。