「一人になりたく無い時に一人されて、寂しくない人は居ないと思う。平気な人っていうのはさ、一人になるって自分で決められる選択権を持ってる人で、そんなもの持ってない人の気持ちは分からないんだ。だから俺は、一人きりの子が居るなら見つけて傍に行ってあげたい。なんとかしてあげたいって思ってる」
やけに真っ直ぐな声色で発せられるそれは、きっと私とのやり取りへの答えだと思う。先程彼が言った、『一人は寂しいよ』という言葉が頭の中に浮かび上がってきて、今の彼の言葉と重なった。
私はその言葉の中に彼が普段隠している本心が見えたような気がして、逃すまいと、自然とそれは口をついた。
「君は、一人が怖いの?」
あまりにもはっきりと言い切る彼の一人という事に対しての捉え方は、何度も何度も見つめて答えを探してようやく辿り着いた結果のように思えた。自分以外の誰かの為と言いながら、それを一番恐れているのは彼だと、一番怖い事だからこそ他の人をそんな思いはさせたくないのだと、彼の独白は私の耳にはそう聞こえた。普段一人とは正反対に居るはずの彼が、何度も何度も…まるでたった今この場ですらも、その寂しさから逃れたいと思っているかのように。
私の問いに、目を丸くした彼がハッと私の方を向いた。分かるの?と、私に尋ねてくるような表情だった。
「うん。一人が、怖い」
「だからいつもみんなと居るの?」
「そういう訳じゃ……分かんない。みんなと居るのは楽しいし、好きな人を一人にさせたく無かったから気づいたらこうなってたけど…俺の方が一人になりたく無かったから、なのかもしんない。だからなのかも」
「そっか…」と、呟く彼を眺めながら、私は彼の沢山の友人達を思い浮かべていた。彼らは皆瀬良君の事が好きで、瀬良君と居たいと思って集まって来る。それは全部瀬良君の容姿やらコミュニケーション能力やらの力だと思っていたけれど、それだけでは無かったのかもしれない。彼らは皆、瀬良君に大事にされたくて、瀬良君に寂しい時間を埋めて貰いたくて来て居たのかもしれない。もしそうだとしても、彼はそれを当たり前にやってのける人なのだと、今私は初めて知った。



