大事にされたいのは君


…はずだったのに。

「だから言ったじゃん。吉岡さんのそういう気持ちなんて関係ねぇの。俺がしたいんだからそれでいいの。寂しい吉岡さんがここに居たんならここに俺は来るべきだし、来たのは正解だったの」

「…なんて自分勝手な人なんだ」

どうやら全ては瀬良君自身の為だったらしい。私の事を思って私の為に動いてくれた訳では無かったらしい。瀬良君をやたら素晴らしい人のように言ってしまった先程までの自分、その言葉に心が傾いてしまっていた自分、彼は本当にただの自分勝手な人だった、それが現実でした。

彼の返事に引いた自分がジロリと彼を睨みつけると、何かおかしな事でも?とでもいうように首を傾げた瀬良君がニヤリと笑った。

「まぁ、本当は嬉しいのにカッコつけて強がって素直にお礼も言えない吉岡さんには、それくらいが丁度良いでしょ」

「!なっ、」

「それとも本当に一人で居たかった?俺じゃない他の誰かに見つかりたかった?」

「……っ」

「なーんて。別に答えは求めてないけどさ。吉岡さんの言う通り俺は自分勝手の塊だし、吉岡さんは俺に付き合ってくれてるだけだし」

「それでいいんだよ」そう言った瀬良君は、私から視線を外して真っ直ぐ前を見つめていた。正面から捉えられないその薄い表情は、今どんな気持ちでそんな事を口にしているのかがまったく読み取れなかった。だから私にはそれにどんな返事をしたら良いのかも分からず、自然と私の視線も彼の見つめる先へと同じように動いていった。その先には何も無い。白い天井に、空が見える窓、この二つしか無い。

すると突然、「あのさ」と、彼は前を見つめたまま口を開いた。

「一人が好きな人って居るけど、きっとそれって本当の一人きりって訳じゃないと思うんだよな」

急な話題にいきなり何の話だろうと思ったけれど、この先に続く彼の言葉に黙って耳を傾けた。私は興味があった。