「私が一人で寂しくしてたとして…それがさ、君がここに来る理由にはならないと思うんだけど」
思っている事は、そのまま口から飛び出していた。最近、彼に対して私の心情はするりと口から出て来るようになったと思う。私にとって彼は、どこまで言っていいのか配慮をする必要の無い相手になりつつあった。それはきっと、彼がもともと人と接するのが上手い事と、彼自身が私を近しい存在として扱ってくる事が原因だと思う。彼は人の懐に入り込むのが上手い。
すると彼は、ポカンとした顔で瞬きを一つだけした。まるで私の言葉の意味を全く理解していないとでもいうような…自分がここに居る事に何の問題があるのだとでもいうような。それがまた、私の心に引っかかった。
「…私が一人で居て、それが君に関係ある?探しに来る必要ある?」
「…え?」
「君は他の友達といつも食べてるでしょ?君は私の所に来るよりそこに居るのが普通でしょ。なんでここに居るの?」
言葉は、やけに刺々しいものになっていた。
「だから、吉岡さんが一人で寂しいと思って、」
「君と違って私は他に友達なんて居ないもんね。私を構うと気分が良い?一人で寂しい私を助ける自分はさぞ満たされる事でしょうね。私は一人は寂しいだろうから君の所に来たよ、なんて言われても嬉しくない。私は、一人で寂しい私なんて気づいて欲しくなかった。私の為を思って動いてくれてるなら来て欲しく無かった」
溢れた本音に、ハッと我にかえった。
そっか、私、気づいて欲しく無かったんだ。惨めな私を見せたく無かったんだ、特に瀬良君には。だからこんなに苛立ってこんな事を…瀬良君と私を比べてより浮き彫りになる自分の惨めさを、私が認めたく無かった。ただ、それだけだったのに。
今更湧き上がる後悔に、私は俯いたまま顔を上げられなかった。来て欲しく無かったなんて、そんな事無かったのに。一人ではやっぱり寂しかったし、だから来てくれて、気づいてくれて、嬉しかったはずなのに…八つ当たりだ。なんて酷い事を言ったんだ。こんな私に構う意味が分からない。自分勝手で、プライドが高くて、何の面白味も無い人間だって、瀬良君と関わるようになってようやくちゃんと自覚した。瀬良君とは正反対。寂しいのは私。本当に孤独なのは私だけで、瀬良君は違う。私なんかに構う時間が勿体無い。



