「いただきます!」
「た、食べるの?」
「食べんよ。昼休みは昼飯の時間でしょ」
「いやそうだけど…なんでここで?」
その私の質問に、ジロリと、彼の二つ瞳が私の方とへ向けられた。
「だからそれはこっちのセリフなんだって。吉岡さんなんでこんなとこ居んの?教室出てったなぁって追いかけたらもう居ねーの。足速過ぎだし紛れんの上手過ぎだし割と探した!」
フンっと鼻を鳴らしてパンをひと齧りする瀬良君。いやいや、いやいやいや…
「なんか怒ってない?」
「怒ってる」
「なんで?何に?」
「吉岡さん、こんな見つけづらい所に居るから!」
「そ、そりゃあ他の人にバレない所探したから…って、それが何?なんで探したの?なんでここに来たの?なんで今居るの」
可笑しな状況に質問が追いかけ追い越すように口をついた。見つけづらかっただけでなんでこんなに怒られなきゃならないんだ。理不尽だ。八つ当たりだ。私は見つかりたく無かったし探してなんて頼んで無いのに。私も人の事を言えないのはこの間分かったけれど、それでも言わせてもらう。この人は結構自分勝手な人だ。我が儘な人だ。
心の中で思っている事が顔に出ている自覚はあった。しかし彼が、私の気持ちを全て汲み取った上で、それこそ何を言っているのだとでも言いた気な表情で私に答えた。
「だって吉岡さん、一人じゃん」
「…そうだけど」
「一人は寂しいよ」
そう言ってじっと見つめてくる瞳は、やけに真剣で…その思いもよらない答えに、私は頭が働くのをやめてしまったかのように返す言葉が見つから無かった。
『一人は寂しいよ』
そんな当たり前の事を私に諭すような口調で呟く彼の意図が分からない。真意はなんだ。寂しいから何なんだ。私が一人で寂しくしている事と、今ここに他の友人らと食べているはずの瀬良君が彼らを差し置いてまでして私の所で食べている事は、イコールでは繋がらない。納得がいかない。



