なんて、変な前向きなテンションが私を支配し始めた頃合いに、ようやく迎えた昼休み。チャイムと同時に慌てて出て行く朋花ちゃんを見送って、私も購買に向かったり他の教室に移動したりする生徒達に紛れて教室を出た。よし、誰にも気にされていないだろう。後は屋上のドアを目指すだけだと思うとつい焦って急ぎ足になってしまうけれど、なるべく平静を装って目的地へと向かう。

「良かった…誰も居ない」

つい小さく呟いた声は、私にしか聞こえないまますっと消えていった。普段の教室の階から二つ上のここには、しんと静まる狭い空間があった。もしかしたら、なんて少しだけ疼いた冒険心から目の前のドアノブを回してみたけれど、当然立ち入り禁止な為鍵が掛かっている。それに少しだけガッカリした。

さてと。とりあえずやる事やろうと階段の一番上に座ると、朝買って来た菓子パンの袋を開けた。今ものすごくメロンパンにハマっている。前にハマって一回飽きてまたハマった一周回ってのパターンだ。家から学校までの間に三軒別のコンビニがあるので、毎回今日はどこで買おうかと悩める事がとても楽しい。といっても毎日コンビニで買っていたらお金がいくらあっても足りないので、もちろんお弁当の日もある…けれど、朝作るのが面倒でなかなか毎日持って来れていないのが現状である。

メロンパンって安いのに大きくて美味しくて素敵…なんて、手元にあるいつも食べているメロンパンの素晴らしさを再確認していた、その時だった。

「あ!こんな所に居た!」

冷たさを感じる程の静けさに包まれて居たこの場所に、場違いな声が響き渡った。メロンパンからハッと顔をあげた先、階段の一番下から見上げるようにこちらを見る見慣れた彼の姿が目に入った。

「な、なんで…?」

「それはこっちのセリフだっての!もーこんな所に居んなら言ってよ」

何故か不機嫌…というか怒っている瀬良君は、「ちょっと待ってて、移動したらダメだからな」と、私に釘を刺してから引き返していった。何が起きたんだ…と呆然としつつ、再度メロンパンを食べ始める。すると本当にすぐだった。ドシドシと早足の足音が聞こえてくると思ったらすぐに彼は帰って来た。

瀬良君は普段以上に足音を響かせながら、踏みしめるように階段を上がって私の隣に腰を下ろした。その手元にはコンビニのパンが二つ。