まるでしっかり考えた末での行動のようだ。悩み相談の時もそう。軽い言い方の奥に潜む本音の気配。彼は普段の学校生活の中で、自分からは一切そこら辺を掘り下げた話をしてこなかった。あの二人の放課後だけ。あのたった二回だけ。
だから普段の彼の言動のどこまでを信じていいのか私は私のカンに頼るしか無く、彼への対応に戸惑うばかりの日々を送っている。
「瀬良ー、昨日頼まれたやつ持って来たぞー」
「お、サンキュー!待ってた待ってた!」
教室に入るや否や、あんなに意味有りげな事を言ってずっと着いてきたくせにあっさりと友人の元へ去っていく彼に、やれやれとまた小さく溜息をついた。随分振り回されている自覚はあるけれど、まぁそのうち慣れるだろう。きっと声を掛けてくれる友達が一人増えたって事だ。そういう事。それだったら有難い事なはずだ。
そして遅刻ギリギリのタイミングでいつも通りに入って来た朋花ちゃんを迎えてホームルームが始まり、また今日も一日が始まった。…始まってすぐの、事だった。
「由梨ちゃんごめん、実は昼休みお弁当持ちでミーティングなんだよ…」
一時間目の移動教室中に申し訳なさそうに告げられた事実に、私の気分はドン底まで落とされた。今日は一人でのお昼が確定した。なんだかんだでいつも朋花ちゃんは一緒に食べてからミーティングやらなんやらに行ってくれていたから一人でのお昼は間逃れてたのだけれど、今回。ついにその時が来たらしい。
「大会近くて食べながらミーティングからの練習らしくて…逆に昼休みって何分なのか知ってる?って感じだよね」
「それはハードスケジュールにも程があるね…」
県大会で優勝する程の成績を残すうちのテニス部は色々ハードだ。練習がキツイのはもちろんの事、普段の生活態度にも普通の生徒のお手本になるものを求められるし、生徒総会やら講演会やら何かあるたびに準備片付けは強制的にやらされるしで、見ているこちらからとしては何の修行なのだろうと思わざるを得ないような毎日を部員達は送っている。だからこそテニス部員達の結束は特別固く、それが私が彼女の一番では無い事を表す確固たる理由だった。
「頑張ってね、朋花ちゃん」と、忙しい彼女に心からのエールを送ると共に、行かないで、せめてお昼食べる間だけでも一緒に居て、という言葉を溢れ出ないよう心に留めた。あぁ、これからもうずっとお昼まで気が重い…ただ一人でお昼を食べるってだけなのに、なんでこんなに辛いんだろう。こういう所が学校生活の嫌な所だ。



