どんな話が出てくるのかと思ったら、まさかそんな先の話だったなんて。瀬良君は本当にずっと一緒に居る未来を思い描いてくれていて、今から私が居ないその時を思い寂しがってくれていたのだ。もしかしたら、言ったら離れてしまうと思ったのだろうか。だからずっと黙っていたのだろうか。今更そんな事を知った所で私は…ふふ、置いてく方が寂しがってどうするの。
「じゃあ私は帰りを待てばいいんだね」
私の声に瀬良君はハッと顔を上げた。揺れる瞳が私を映し出す。
「お兄ちゃんと待ってるよ。だって瀬良君、二人まとめて養ってくれるんでしょ?」
なんて、少し戯けてみせた。未だに理解していないような顔をする瀬良君が愛おしくて、緩む口元が隠せなかったから。でも、彼にはちゃんと伝えなければならない。伝えるべきだーーそう。彼の求めるそれを今、私は言葉にして答えにする。
「瀬良君はもう、私達の家族だよ」
ーーそれを聞いた時の瀬良君の顔といったら。今後一生忘れない、死ぬ間際にも思い浮かべるであろう彼の、初めて私に見せたーーいや、他人に見せた、その表情。
ポカンと呆けた彼は我に帰り、その瞳を大きくさせる。ポタリと、涙の粒が地面に向かって落ちていって…やっぱり、彼は柔らかく微笑む。
「……由梨ちゃん」
ゆるゆると伸びてきた腕は私を引き寄せて、包み込んだ。
「好きだよ。もう、分かんないくらい、好きなんだ」
耳元で囁かれたそれは、少し枯れているような声で私の中を響き、巡る。
「俺、君が居れば幸せだ」
それは、甘く蕩けたような笑顔だった。
…ーーあともう少し先の未来。彼の就職を機に同じ家に住むようになり、私達は本当の家族になる。それをもう変わるはずのない事実として、今ここで心に刻んでおこう。私に大事にされたがる君の優しさと寂しさで、私はこれからも君に大事にされ続けたいのです。
大事にされたいのは君 完



