大事にされたいのは君


それがあの時。私に初めて相談した、あの放課後の事だと言われると、なんだか全ての辻褄が合ったような不思議な感覚に陥った。私の知る瀬良君にようやく会えたような、夢と現実が結びついた瞬間に立ち会えたような。

「実際に話したら想像以上に冷たくて、でも優しくて、なんか面白くて、喝入れられた所からもう心掴まれてた。俺の周りに居ないタイプなんだもん、話せば話すだけ楽しかった。でも、俺だけのものにすんのは由梨ちゃんの望みと違うって分かって少し離れ始めて、それから色々失敗した。それがあの頃ね」

そして「拗れた頃の事は思い出したくない」と、忌々しげに彼は呟く。まるで黒歴史のように扱うそれは、私にとっても同じようなものだった。無駄に拗れて傷付いたあの頃はもう思い出したくも無い。ただただ私も瀬良君も未熟者だったのだ。その答えに限る。

「俺の寂しさを取り除いてくれた人。そんでこれから先、俺を寂しくさせられる唯一の人」

ーーそれが由梨ちゃんなんだよな。

ニカッと素直な笑顔を浮かべた瀬良君が、私に向かって手を差し出す。

「そろそろ帰ろ?」

その手を取り、隣に並んだ私達はいつも通りに同じ場所へと向かい歩き出す。向かう先、そこは彼の家でも私の家でも無いのだけれど、私達の居場所だった。私達の家なのだ。

「なんかこうやって一緒に帰ると、これからもずっと変わんないで一緒に居られるような気がするから不思議だよな」

絶対なんてそんなの、無いのにな、と彼は笑顔のまま心の中にあったものをこぼした。彼は寂しがりな人。それはきっと彼の今までの育ってきた環境が影響しているのだろうと、なんとなく気がついていた。

両親不在の家。家族のように過ごしてきた人達との別れ。一人で居る事の寂しさを誰よりも身をもって経験してきた人。だから人の寂しさが分かり、欲しいものを与えてあげられる器用な人。他人に器用で、自分に不器用な人。