大事にされたいのは君


私と彼の生き方なんて言われて、驚いた。彼は人のそこまでを見ている人なのだ。確かに私と彼は正反対だった。いつも人に囲まれている彼といつも一人な私。寂しさを乗り越える為に頼れる人が沢山居る彼とたった一人の兄しか居ない私。本当の私がどういう人間なのか、今の瀬良君なら分かっているけれど、あの頃の私を見ていた限りではそう思われて当然だった。今なら分かる。彼の言うようなそんな格好の良いものではない。単に私に人に優しくする程の余裕が無かっただけだ。

「例のあの時、教室の前通ったんだよ。揉めてる声が聞こえて、内容も何となく分かった。あの子は由梨ちゃんの事知る前の俺と同じ、由梨ちゃんの強さに傷ついたんだ。だから自分を守る為に、由梨ちゃんを傷つけた。答えてくんないからって苛立って、あんなのただの八つ当たりだ」

「……」

彼女の言った、“私には分からないよね”や、“いつも味方してくれないよね”の言葉。あれは八つ当たり、だったのだろうか…いや、違う。正論を振りかざして正義を気取っていた私への、当然の反応だっただろうと、今の私は思う。

「そんな事無いよ。私は、ちゃんと相談に乗ってあげられなかった。私は自分しか見えてなかったし、それでいいんだと思ってたんだから。彼女を傷つけたのは事実だよ」

正しいと思った事をそのまま口にする、ただそれだけの事が何より鋭く人を傷つける事があると、私は瀬良君のお陰で知る事が出来た。だから、全ての非が私にある。これは私が蒔いた種。

「でも傷付いたのは由梨ちゃんも同じだ。あの時由梨ちゃんは泣かなかったけど、あの子の言葉を全部受け止めて、確かに傷付いた顔をしてた」

そう言われた瞬間、あの時の光景がパッと頭の中に蘇った。教室の扉を後ろ手に閉めた彼女から、溢れ出す私への拒絶感。何でこうなったのだろうと混乱する中で、取り返しのつかない事をしてしまった事だけがじわじわと実感として込み上げる。呆然と、彼女の出て行った扉を眺める事しか出来なくて、ただひたすらに気持ち悪い心臓が落ち着くのを待っていた。私はあの時、彼女の言葉に衝撃を受けてーー傷付いたのだ。

「それからはずっと心配してた。誰が由梨ちゃんを慰めるんだろう、泣きたくなったらどこで泣くんだろうって、目が離せなくなった。でも弱い所なんて全然見せてくんないから、どうしても知りたくなって由梨ちゃんに近づいた」