大事にされたいのは君


それを瀬良君は、静かに肯定した。真っ直ぐに、何の曇りのない瞳で彼女を見つめて。

「寂しい時に助けられた事もある。付き合いの長さだけ、一度じゃない。でもそれは他の奴らもそうだ」

諭すように語る彼の声が、染みるように響き渡った。

「俺にとって友達はみんなそう。寂しさを紛らわせてくれる人達。寂しさを忘れさせてくれる存在。でも、吉岡さんは違う。違ったんだ」

目が合った。瀬良君の強い瞳が私に向けられる。目が、反らせなくなる。

「吉岡さんは俺の支えになる分、寂しくもさせる人だった。でも今は寂しくない。吉岡さんが取り除いてくれたから。だから彼女は俺の特別な人。俺に知らなかった事を教えてくれた、与えてくれた、代わりなんてどこにも居ない人。…だから他の奴には絶対渡したくねぇんだ」

そして彼の視線はそのまま、彼女の方へと移された。

「知ってた?俺って実はめちゃくちゃ重いんだよ。束縛なんて一番嫌な事だったはずなのに、今はその気持ちが分かっちゃうんだよな。それも全部吉岡さんが教えてくれた事。今まで鬱陶しく思ってた事も全部吉岡さんにはして欲しいとすら思うから笑える。ほんと今まで何だったんだろうな」

「……」

呆れたように笑いながらそんな事を語る彼を彼女は黙って見つめていた、まるで言葉を失くしたかのように。そして小さな声でポツリと呟いた、「そんな瀬良、知らない」という言葉。それにまた瀬良君は自嘲的な笑みを浮かべる。

「多分誰も知らない。俺は自分の中の大切なもんに他人を関わらせないから、本当の俺の根っこは誰にも見せた事がねぇ。ただ、吉岡さんはその根っこの部分だったーーそれだけの話なんだよ」

「だからごめん、分かって欲しい」その瀬良君の言葉に、彼女は俯き、黙って頷いたのだった。