大事にされたいのは君


急にきょとんとしたかと思うと、眉を顰めて首を傾げた瀬良君は、どうやら私の言う酷い事に思い当たる節が無いらしい。当然の事のように、彼は言う。

「由梨ちゃんも関係あるんだから問題無くね?」

「……」

そうだった。この人はそういう人だった。

彼は他人から自分へと向けられる感情に興味が無い。これからどんな話をするのか、何をするつもりなのかは分からないけれど、彼が相手の気持ちを思いやろうとしていない事は今のやりとりでハッキリと分かった。大切にしようと思っていない相手に対して、彼は自分の都合でしか物を見ない。

「自然消滅してくれればいいと思ってたんだけど、やっぱそう上手くはいかなくてさ。これでハッキリさせて終わって貰う」

「…その最後の場に私が居ていいの?」

相手の人の最後の彼との時間なのに、なんて上からものを言う様だけど、最後くらい二人きりにさせてあげるべきなのではと、彼の慈悲も無いような言葉で思うようになっていた。けれど、彼は言った。

「居てくれれば俺も頑張れるから」

「……」

そうか。彼の為だなんて考えは無かった。彼にとっても何か大きな意味がある事なのか。

そうと分かったら、私がそこに居る意味はあるのだとすんなり受け入れられた。あんなに居ない方良いだの酷い行いだのとごねていたのに。彼の為なのだと分かった瞬間これだ。どうやら私にとっても一番大事なものは彼の気持ちで、それ以外は大した問題ではないらしい。結局私達は根っこの部分で似た者同士なのだ。

ーーそして迎えた放課後。

約束の場所は私達の教室らしく、いつもの定位置でいつも通りの瀬良君と少し緊張した私は待っていた。するとガラリと、故意に閉じておいた教室の扉が開く。そこに居たのは、あの時瀬良君からジャージを借りていた、トイレで私に牽制をした、彼女だった。