なのにまた、悲しい顔をさせてしまった。ちゃんと意味が伝わったとしても、どうやら前向きさはあまり伝わらなかったようだ。

どうすれば気にしないで貰えるだろう、どうやって次の話題に持っていこう、と、空気を変える為に考えあぐねていた、その時だった。

「あ、選択のプリント忘れた」

声が耳に飛び込んできた。瀬良君だ。どうやら次の選択科目で使うプリントを忘れてしまったらしい。私と朋花ちゃんと瀬良君は同じ科目を選択している為、この教室に残ったまま次の授業が始まるのを待っている所だった。

今回のプリントは提出するものでは無い。前回の答え合わせに使うだけのものであって、だから人に貸したり見せたりも出来るし、瀬良君も貸りたり見せて貰ったりすれば問題ない。しかし自分の答えが書いてある為、貸す側としては、簡単に他人に見せるのは恥ずかしいものでもある訳で…

「見して」

「えー、嫌なんだけど」

案の定。仲が良いからこそ、気安く隣の女子に断られている瀬良君。

「…由梨ちゃん、私の一緒に見よう」

選択科目では席が隣の朋花ちゃんが、こっそり耳打ちした。どうやら私が瀬良君の方をジッと見ているのを見て、考えていた事まで察してくれたらしい。

「で、でも悪いし」

「いいよいいよ、私が頭悪いのなんて今更だし。プリント貸してあげなよ」

悪戯を思いついた時のような笑顔で朋花ちゃんは私の背中を押してくれた。彼の席は私の斜め後ろだ。私が振り返って声を掛けても変では無いはず。だって私だって友達だし、みんなも私達が知り合いだという事くらいは認識してくれているはず。

「声掛けるチャンスだよ」と言ってくれる朋花ちゃんは、先程の私の言葉を聞いて、どういう事なのかしっかり考えてくれていたのだ。今より仲良くなりたい。もっと話がしたい。その、きっかけになるよねと。