「…ごめんなさい。それでも、図々しくても、お願いがあるの」

もう嫌われてしまったのは分かっている。でも、どれだけ後悔したって何も変わらない。だから行動に移した。これが最後の覚悟だって出来ている。欲張りな私を捨てた先に、新たに現れるのもまた、欲を捨てられない私。

「私は、君とまた話がしたい。君に頼って、君に頼られたい。君と居られないとすごく寂しくて、君が笑ってくれないとすごく不安で…君と、前の関係に戻りたい」

「最後のチャンスを、私に下さい」と、もう一度頭を下げた。私がいけなかった。私のせいで崩れてしまった関係だった。でも、私の想いを捨ててしまえば、私の変わった部分を前のように直せれば、きっと戻れるはずだと思った。彼が求めるものを、私が差出せるのならば。

「じゃあ吉岡さんの言う前の関係って、何?」

何度も頭の中で往復したやりとりを、目の前の瀬良君が私に問う。今だってそうだった。私の中で出した結論を、私は口にした。

「君の求めるものに私が応える関係。君に必要とされて一番大事にして貰える…君の言う、一番好きな友達に、また戻りたい」

「……」

瀬良君は、すぐには答えなかった。ジッと私を見つめたまま、スッと息を吸って何か声に出そうとしたものを、一度飲み込んだ。そして、

「その関係には、戻りたくない」

変わらない無表情で一言、そう言った。

終わっていた。やっぱりあの頃の私達は彼の中ではもう終わっていて、彼にとってもう必要の無いものとなってしまっていた。それは今までの全てが崩れ去って、最後にかけた一縷の望みがまるで瞬きの間のような一瞬にして消え去った瞬間だった。

ダメだった。手遅れだった。…でも、そうかもしれないとは思っていた。三好君にだって言われていた事。だから私はもう一度。掛け替えのない彼だから、もう一つだけ、欲を出す。

「…分かった。じゃあせめて、友達になりたい」

「…友達?」