大好きだったのは、大嫌いな君だった。




「なえーおはよっ」


1人で本を読んでいると突然呼ばれた自分の名前と、どんと後ろからくる衝撃。

と共に、遠慮なく乗せられる体重。

眠いのになんだとか思いつつ、正体は誰か分かっているのでそんなことは言えない。




「鈴、おはよう」

仮面をつけるように浮かべた笑顔は毎朝の恒例行事。

と、自分の甘ったるい声。


案の定わたしに遠慮の欠片もないことをしでかしてくれたのは、クラスメイトで同じグループの鈴。

小柄でふわふわの髪が魅力的で、生まれつきの垂れた目と小ぶりの鼻と唇が男子からも人気。

加えて可愛らしい妹キャラで、守ってあげたくなるようなザ、ヒロインキャラって感じ。

・・・なんて、そんなの上辺だけのキャラクターだけど。

そこまで思って慌てて考えを打ち消した。

なんて性格悪いことを。

案外わたしも鈴と同化してしまっていたのかななんて考えて少し悔しかった。





「なえ、ハンドクリーム持ってる?なえの手めっちゃいい匂いだからさー使ってみたくなっちゃって」


そう笑顔を浮かべながら近づいてきたのは日和。

日和は猫目でさらさらとしたらストレートの髪が自慢。

ひとつひとつのパーツが整っていて、可愛いと言うよりは綺麗という感じの自称パリピキャラ。

パリピとか卍とかっていう最近の流行りのJK用語を頻繁に使うタイプの人間で、よく笑うしよく泣く。

良くも悪くも感情表現がはっきりしている性格だった。



「あー今日は持ってきてないんだ、ごめんね」

申し訳なさそうに眉を下げたわたしを見てそっかあ、と残念そうに声を上げた日和はわたしだから許してくれるのだろう。

わたしがいつも使っているミルク風味のハンドクリームは貰い物で、ずっと大事に大事に使っているからあまり人に貸したくはない。

本当は持ってきていたけど自分だけが使っていたいという独占欲が邪魔をして、持ってきてないと嘘をついてしまった。

嘘ばかりついていて、本当に情けない。



「ねえねえっ、柊凪まだかなあ?」


楽しげにそう聞いた鈴の言葉。

その話題の中心となった柊凪という人物の名前に、どくんと心臓が嫌な動機を立てた気がした。


「あー柊凪今日遅刻してくるらしいよ?めんどいって」

「えーっ。つまんないなあ、電話でもしてみるー?」

「きゃははっ、やってみちゃうー?」

「使用禁止とか知らねえしって感じ!まじポンスタないと生きてけないー」


鈴と日和の言葉に今日何度目かのため息をつきそうになって慌てて息を殺す。

本当は朝学活が終わったら、部活が終わるまで使用禁止なのになあ。

まったく、本当にこの人たちは。


「んーうちはパスしとこうかなー。親厳しいんだよねー」