困った。
どうすればいいのだろう。
目を泳がせて誰かに助けを呼ぼうと思っても、周りは知らない人ばかりだ。
俺のこの状況を理解して助けてくれる人はいない。


「・・・おい」
「・・・・」
「どこいくんだ?」
「・・・・」


話し掛けても全く反応はない。
どうしようかと思ったが、ある一つのことに思い当たった。
正解かどうかは分からないが、きっと合っている。


「ーーー莉桜菜」


「ん?何?」


名前を呼んだら、莉桜菜は振り返って俺の方を見た。
勝ち誇ったような表情で、まっすぐ俺の目を見つめた。
完全に俺の負けだった。


「はぁ・・・良い性格しているよな」
「褒めてくれてありがとう」


にっこりと笑う彼女に、俺はもう敗北しか感じなかった。


どこか彼女に感じていた、否、光平以外に作っていた壁が、彼女に対してなくなった瞬間だった。



俺の中で、転校生・・・莉桜菜の立ち位置が、光平と同じ場所になったような気がした。



「莉桜菜」


「何?」

「疲れた、帰ろう」


「そうだね」


今日の莉桜菜とのこの時間が、これから一生の思い出になる日になるなんてまだ、俺の中にはなかった。