「ありがと・・・て、また、私のこと転校生って言った」
「あ・・・」
「朝は、名前言ってくれてたのになー」


嫌みのように言われて俺は押し黙る。


「ね、いつになったらちゃんと言ってくれるの?」
「・・・」
「私には転校生って名前じゃなくてちゃんとした名前があるんですけどー」
「・・・」
「流石の私も傷つくー・・・泣いちゃうー」


わざとらしく目元を手の甲で拭う仕草までしてくれた。
そう言われると俺の胸も痛くなる。
転校生って言っていたのが定着してしまっていたから・・・でも、前にも言われた。

「ね、真司君。私の名前は?」
「・・・塩田」
「下は?」
「・・・莉桜菜」
「私はどっちで呼んで?と言ったかな?」
「・・・莉桜菜」


そう言うと、転校生・・・莉桜菜は、にっこりと笑顔で頷いた。


「ピンポーン。今からちゃんと名前で呼んでよ」
「・・・」
「ね?」
「努力します・・・」
「名前呼ぶ位簡単なことなのに」
「俺にとってはハードル高いんだよ」
「ふーん。でも、名前呼ばれないと答えないからね」
「・・・」


じゃあ、別に名前呼ばなくてもいいか?なんて思ってしまった。
しかし、それを察知されたのか、転校生は、俺の横を通り過ぎて歩き始めた。
どこに行くのか分からず、追いかけるが彼女は何も言わないし、俺の方も見ない。