「え？私？」
「そ。いつも笑顔なのが気になっていただけだから」
言ってしまって、転校生の反応が気になるが、今は自分の体の熱が全部顔に集まってしまっていてそれどころじゃなかった。
両手を自分の頬に当ててみると、暑い。
きっとゆでだこみたいになっているに違いない。
「いつも、笑顔・・・そうかな？」
「？」
顔を上げて、転校生を見てみると、彼女は小さく笑って困ったような表情になっていた。
笑われるかと思っていたから、違う反応に顔に集まっていた熱は徐々に落ち着いていった。
「笑顔・・・まぁ、笑っていると楽だからかなー」
「楽？」
「そ。調子悪くてもさ笑っていたら誰も何も言わないじゃない？笑っていたらみんな笑ってくれるし・・・だから、私はいつも笑っているのかな？」
そもそも、いつも笑っているなんて自分自身気がついていなかったよ。
と、転校生は苦笑した。
転校生のその言葉は、なんだか言葉の裏に何か事情が隠れている気がした。
でも、それを聞き出せる自信はイチミリもなくて、聞いてもきっと彼女ははぐらかしてしまうだろうと確信があった。
「・・・俺は笑うの苦手だから、羨ましいと思うけど」
「光平君といるときは笑っているもんね。妬いちゃう」
「俺は、光平と仲良しだから」
「ずるいー」
だから、俺は話を反らした。
上手い具合に空気が読めた。
珍しく、機転が利いたな、と心の中で自分を褒めてやってみたのだった。
