スマホを出して見てみると、光平からで、なんと今日は緊急事態で来れないと言うことだった。
申し訳ないとスタンプも一緒に送られてきた。
滅多なことがない限りはいつも来ていたから、どうしても無理な事情が出来てしまったのだろう。
そんなときもあるので、俺は大丈夫だと返信した。
今日は、光平はいないのか。仕方ないが、少し寂しい。
「誰からのメッセージ?」
「光平」
「今から来るって?」
「その逆、来れなくなったって」
はぁ、と俺は小さくため息をついた。
光平がいないなんてつまらない。
「用事でも?」
「そうみたいだ」
「それは、仕方ないね」
「あぁ」
「じゃあ、今日は1人で弾くの?」
転校生が首を傾けながら聞いてくる。
俺は、少し悩んでから一つ頷いた。
「少しして、今日は帰る」
「曲は?」
「曲は・・・」
俺は、横目で転校生を見た。
転校生は、目を輝かせながら俺を見ている。
何を弾くんだろう、と興味津々だ。
「ーーー決めて良いよ」
「え?」
「何、弾いてほしい?」
「決めて良いの?」
「あぁ」
あまり難しい曲は困るが、知っている曲なら大体は弾くことが出来る。
転校生は、少し悩んでから、一番最初に転校生に見つかったときに弾いていた曲、と彼女は言った。
「あの曲?」
「そう、一番最初にここで聴いた曲がいいな」
にっこり笑って、転校生は聞く体制に入った。


