「ね、遊びに行きたいー」
「・・・たとえば」
「んー暑いからー涼しいところー」


暑い、暑いと連呼している転校生の隣で俺は、その言葉を右から左に聞き流している。
夏なんだから暑いのは仕方がない。
学校に行けば冷房がついているからそれまでの辛抱だ。


「ね、真司君」
「なに」
「来週からの夏休み、何するの?」


頭一つ分くらい低い転校生が俺を見上げてくる。


「夏休み・・・特に考えていない」


きっと、光平と一緒に歌を歌いまくるんだろうと思っている。
昨日の連絡で、もうそろそろ光平が作った曲が完成するらしい。
ちょいちょい曲の完成をちらつかせられてきたから、だんだんと気になってきている。
せめて歌詞だけでも教えてくれと言ったけれど、完成してからのお楽しみだと言って教えてくれなかった。


「そっかー」
「転校生こそ、何するんだよ」
「あ、また転校生って!あたしの名前は?」
「あー・・・塩田」
「塩田?」
「莉桜菜」
「うむ、よろしい!」


ついつい、転校生って心の中で呼び続けていたから言葉にも出してしまう。
転校生のままじゃ確かに失礼だと思うから名字で呼ぼうと思ったが、本人は名前の方で呼んでほしいみたいだった。