しばらく歩いていると、見慣れた姿が目に映ってきた。
ぼんやりとどこかを眺めている様子だ。
ふと、何かに気づいたのか俺の方を見てきた。
俺の姿が、その目に映ると花が咲くように笑った。


「おはよう、真司君!」
「おはよう」


転校生は、軽やかな足取りで俺のところまでやってきた。


「今日も晴れたね」
「あぁ、暑いな」
「まだ朝なのにね」


季節は、夏に移り変わり、蝉の鳴き声が五月蠅い8月になろうとしていた。
世間では、夏休みになっているが、高校生は補習やらなにやらで学校はあるのだ。
特に俺の通う高校は進学校でもあるから、8月の最初の方は、課外で普通の授業と変わらず学校がある。
本当の夏休みまで、あと5日。
それまで、地獄の毎日を過ごしている。


俺と転校生は並んで学校に向かう。
今となってはもう当たり前になったこの状態。
隣に転校生がいるのが本当に普通になってしまった。


「ねー今日さ、数学が2時間もあったよね?」
「だったな」
「なんで数学2時間・・・」
「仕方ない」
「はぁー・・・遊びに行きたいなぁー」


転校生の心からの言葉が紡がれた。
普通なら夏休みだもんな。その気持ちすごく分かる。