チラッと横目で見てみれば、転校生が俺の横を歩いている。
「ねぇ、真司君」
「なに」
「真司君は歌手とかなるの?」
「まさか、俺にそんな才能はないよ」
「そうかなぁ?すごく上手だったけどな」
「それはどうも」
上手と言ってくれるのは素直に嬉しく感じた。
それと同時に歌手になるのと聞かれて一瞬自分の中でどきっとなった。
今までそういう道のことは考えたこともなかったから。
光平と時間が合うときに歌やギターを弾けるだけで満足していたから。
歌手、か。
自分が舞台の上に立っている姿を思い浮かべてみる。
正直、無理だな。
コミュニケーションが苦手なのに、誰かの前に立って何かをするなんて無理に決まっている。
「ね、また聞きたいな」
「は?」
「真司君の歌」
転校生が俺を見上げてくる。
その目は期待に満ちている。
「・・・他の誰にも言わないなら」
「ほんと?」
「・・・・たまにしかしてないから」
「というと?」
「運が良ければ聞かせてもいい」
本音を言うと、あまり聞かれたくなかった。
結構頻繁にしているが、たまに、と言ってみた。
「そうなんだ?じゃあ、するとき教えてね」
「・・・あぁ」
一応、頷いておく。
絶対教えないけどな、と心の中では呟いているけれど。
俺って、性格悪いな。
そう思って自嘲した。


