その日の夕方、光平に誘われて俺はいつものようにアコースティックギターを肩に河原に行っていた。
日が経つにつれてどんどん陽が落ちるのが遅くなっていく。
6時を過ぎようとしているのに、まだ明るい。


「よ!」


先に河原に来ていた光平は、俺の姿を見つけると手を上げた。


「よう」
「なんだ?なんか元気なくね?」
「いや?そうでもないよ」


俺は、光平の隣に腰を下ろしてギターのカバーを開け、準備を始める。


「あ、そういや聞いてよ。俺さ、」
「彼女が出来たんだろう」
「言わせろよ!そうっ彼女が出来たんだ!」


そう言うと、光平はスマホを出して俺に画面を見せてきた。
画面には仲よさそうに映っている光平と彼女と思われる女の子のプリクラだった。


「かわいいだろう?」
「・・・そうだな」
「なんで間があるんだよ」
「俺にはよく分からないから」


ギターを膝において音を鳴らしてみる。
うん、今日もいい音だ。


「つまんね。真司、お前好きな奴とかいないのか?」
「俺に?まさか」
「なんで」
「コミュニケーションが大の苦手の俺に、そんな好きな奴とか出来るわけないだろう?」
「そうか?お前、俺には普通だろ?」
「お前だからだよ」


まともに会話が出来るなんて、光平とあと少しの友人だけ。
人と関わることは、苦手なんだ。


「それをもう少し周りにしてみればいいのに」
「・・・出来たら苦労しない」
「難儀なやつだなー」