頬を膨らませる莉桜菜に、俺は笑う。


「さ、どうぞ」
「うーー・・・くしゅんっ」


渋々と口を開こうとしていた莉桜菜だったが、代わりにくしゃみが派手に出た。
こんな寒い中、ずっと動かずにいたらくしゃみも出る。


「・・・帰ろうか」
「え?」
「風邪引く」


俺は、莉桜菜の手を引いて自転車に戻る。


「ちょっと、言いたいことは?」


後ろから莉桜菜に聞かれて、一度足を止める。


「また、今度・・・暖かいところでしよう」

「・・・そうだね」


今度、と約束して、俺たちはまた自転車に乗って病院に戻った。
ぎゅうっと俺に抱きつく莉桜菜の腕の力や温もりを忘れないようにと体の記憶に刻みつけながら。




本当に、最後の莉桜菜とのお出かけだった。
元気な内に、莉桜菜のやりたいこともして、俺自身も楽しく過ごせた。


最後。


最後の莉桜菜と遊べた大事な日だった。