冗談かと思っていたけれど、それは俺の過信だった。


「真司君、帰ろ」


放課後の靴箱。
昇降口の所に転校生が立っていた。


「・・・なんで」
「同じ方向なんだからいいでしょー?」


にこにこと笑顔で俺の側まで来た転校生に俺は小さくため息をついた。
転校生は、俺に宣言した通り、毎日一緒に帰ろうとする。
俺としては特に一緒に帰る理由もないし、1人で帰りたい気分でもあるから、さりげなく早めに教室を出てみたり、遠回りしてみたりするけれど、そのどれもが失敗に終わっていてここ数日、俺は転校生と一緒に帰る羽目になっていた。

「今日の数学さー宿題かなり出されたよね。鬼過ぎる」
「あぁ」
「英語もさー明日小テストあるから覚えないといけないしー」
「あぁ」
「面倒だよねー」
「そうだな」


隣をちらりと見れば、俺より頭一つ分くらい下で、転校生が笑みを浮かべたまま話している。
俺はそれに対して相づちを打つ程度であるのに、転校生からは言葉が止まらない。


「ーーーあ、」
「?」


歩いていると、突然転校生は声を上げた。


何かと思えば、転校生は何かを見つけてそれを見ているようだ。
その視線の先を見てみると、コンビニが見えた。


「ね、真司君」
「?」
「アイス、食べたい」


キラキラとした目で転校生がコンビニを指さした。


「アイス・・・?」
「うん、アイス」


アイスが食べたいと転校生が言う。
俺の中の答えは一つだった。