「・・・寒く、ないか」
「ん、大丈夫」
結局俺は、莉桜菜の願いを聞き入れてしまった。
点滴が終わって看護師さんが外しに来たとき、莉桜菜担当の人だったが、いつものような元気さはなかった。
それは、今から何をしようか知っていて、莉桜菜の状態を知っているからに違いなかった。
もう、諦めるしかなかった。
俺は、しっかりと莉桜菜に服を着込ませて、マフラーや手袋もしっかりとするように言った。
スカートを履こうとしたので、ズボンにしてと言った。
莉桜菜は俺の言うことは聞こうとしなかったので、半ば脅してズボンを履かせた。
文句を言いながらも女の子らしい洋服に着替えて、化粧もして、お出かけする格好に変身する。
「はー、久し振りのお外」
莉桜菜は、外の冷たい空気を肺一杯に吸い込んで、はき出した。
白い息が空に上って行く。
「タクシーで行くか」
「真司君、今日は歩いてきた?」
「否、自転車で来た」
「じゃあ、自転車で行こうよ!」
「・・・は?」
莉桜菜の申し出に俺は、低い声で聞き返してしまった。
「自転車、私乗りたい!」
嘘だろ、と思った。
でも、こう言ってしまった莉桜菜の気持ちを覆す言葉を俺は持ち合わせていない。
「寒いだろ」
「真司君がいるから大丈夫」
「途中で何かあったらどうする」
「大丈夫、今日終わるまでは根性で乗り切るから」
「それじゃ困るんですけど」
「リストにも載っていたはずですけど」
「・・・・分かったよ」
もう、俺が折れるしかなかった。


