「じゃあな、塩田さんによろしく」
「あぁ」


俺たちはそれぞれ分れて歩いた。
俺は、まっすぐ靴箱に向かって家路へとつく。
外に出ると、今日は風が少し強くて頬に当たるととても冷たい。
マフラーをしっかり口元まで持ってきて手袋も装着した。


最近は、1人での登下校に慣れてきた。
前まではこれが当たり前だったのに、不思議なものだ。
しばらく歩いていると、時々莉桜菜が立ち寄っていた公園が見えてきた。
何気なく公園に行くと、寒い中小学生が楽しそうに薄着で遊んでいる。
子どもは風の子だって本当なんだな。
そんなことを思いながら、俺は公園の奥にある桜の木の下まで行く。


緑の葉に覆われた桜の木は、まだつぼみすらつけていない。
冬を越えて、ようやく咲くのだからまだまだだ。


莉桜菜が望む桜は、もう少し先だ。


「・・・早く咲かないかな・・・」


ここにはなさかじいさんでもいてくれたら咲かせてくれるだろうか。
頭に浮かんだ絵本に、俺は自嘲した。
何夢見物語りを考えているんだ。


俺は、小さくため息をついてから公園を出て、家に帰った。


重い荷物を自分の部屋に置いてから、制服じゃなくて適当な私服に着替える。
そして、一度リビングに行ってから母さんに出かけることを告げると、カウンターに置いてある封筒を持って行ってと言われた。