「ありがと」


莉桜菜は、嬉しそうに笑う。
その笑顔は、写真に収めておきたいくらいに綺麗だった。


「さ、ほら、あんたも着替えなさい」
「は?」


突然、母さんに洋服を渡された。
反射的に受け取ってしまったが、一体これはなんだ?


「良いから、着替えて」


高峯さんにも言われて、俺は仕方なく渡された服に着替えることにした。
病室に小部屋があって俺1人が余裕で入ることが出来るスペースだったので、そので着替える。


「これ・・・」


着替えてみて、驚いた。
初めて着たが、スーツだった。


「着替えたわね」
「なんで、これ・・・」
「なんでって莉桜菜ちゃんだけって寂しいでしょ?あんたもついでによ」


まさか俺も着る羽目になるなんて思ってもいなかったけどな。
まじまじと自分の姿を見ていると、パシャッとシャッター音が聞こえてきた。
音のする方を見れば、莉桜菜が俺にスマホを向けていた。


「莉桜菜?」
「似合ってるよ」


スマホで撮った俺の姿を見せながら莉桜菜はニヤニヤと笑みを浮かべる。


「・・・楽しんでるな」
「もちろんだよ」


「さー、2人、並んでー」


高峯さんは、俺の背中を押して莉桜菜の隣に立たせた。
下駄も履いていて、いつもより莉桜菜の目線が少し高くなった。