9時少し後に家にやってきたのは知り合いの美容師さんだった。
「おはようございます、高峯さん今日はありがとう」
母さんは、高峯さんに頭を下げると、母さんよりも少し若い高峯さんは首を振った。
「いいえ、こちらこそよろしくお願いしますね」
「すぐ出れますので、ちょっと待ってて」
「はい」
いったん母さんは、家の中に引っ込んだ。
戸締まり確認をするためだ。
俺は、もう準備は出来ていたので、靴を履いて外に出た。
高峯さんと目が合ったので、俺も挨拶をする。
「おはようございます」
「おはよう。真司君、久し振りだね」
「はい・・・今日も、ありがとうございます」
「お母さんからのお願いだもの・・・出張料はたくさん貰うわね」
フフッと高峯さんは笑う。
優しい表情で俺はホッとした。
無理矢理頼まれたんだったらどうしよう、なんて実は心の片隅にあったなんて内緒だ。
「お待たせしました」
戸締まりを済ませた母さんが家から出てきた。
「じゃあ、お母さんの車の後ろから付いていきますね」
「はい、よろしくお願いします」
高峯さんは、自分の車に乗って俺たちが出るのを待つ。
運転席に母が乗って、俺は助手席に乗った。
エンジンが掛かり、ゆっくりと車が進み始めた。
「ーーーお母さん、あんたに聞きたいことがあるんだけど」
運転しながら母さんが聞いてきた。


