「いいえ、必要な物です・・・俺は、彼女から全部話を聞きました」
「・・・なんのこと?」
「莉桜菜さんの病気のこと・・・・そして、もう、長くないということです」
ビクッとお母さんの肩が震えた。
そうだ、保護者であるお母さんが知らないはずがない。担当医からの説明ももちろんあったはず。
「・・・それは、嘘よ」
でも、お母さんは否定する。
信じたくない。私の娘はまだ、生きる。
親の私よりもずっと長く。
そう心の叫びが聞こえてくるようだった。
「・・・俺も、嘘であってほしいと思いました。彼女にこの話を聞いたときも、何をふざけたことを言っているんだと、嘘をつくなと思いました」
でも、違った。
莉桜菜は、嘘をつく人ではなかったし、泣きながら説明をする言葉をどうして否定することが出来るだろうか。
「最初は受け入れられませんでした。家に帰っても嘘だ、夢だと何度も自分に言い聞かせました・・・でも、莉桜菜の言葉は本当のことだと、俺は分かっていました」
だから、泣いた。
だから、無気力にもなった。
コミュニケーションが苦手で、誰かと関わる事が嫌で、常に黙って存在感を無にしていた俺を変えてくれたのは、突然やってきた転校生の莉桜菜だった。
彼女と関わる事で色々な経験をして、いつの間にかクラスの中で友だちも出来た。
普通に過ごしているかどうかは分からないが、コミュニケーションが少しずつとれると用になっていった。


