俺たちは、中庭に移動して、ちょうど空いていたベンチに並んで座った。
そして、一呼吸置いた後、俺はポケットから四つ折りの紙を出してお母さんに渡した。
「これは?」
「莉桜菜さんから預かっている物です」
お母さんは、ゆっくりと紙を開くと、中に書いてある文字を読んだ。
「莉桜菜さんが、これからやりたいこと、叶えたいことが書かれています」
「なんで、こんなものを?」
やはり、お母さんは莉桜菜の残りの寿命を否定していた。
治る病気だと、また元気になるんだと、そう思って拒絶している。
治るなら、別にそれでいいんだ。
こんなやりたいものリストなんて書く必要もないし、俺がこうして色々考える必要もない。
元気になってからすればいいんだから。
でも、それはあくまでも、元気になる、これから先も生きているということが前提なのだ。
今、ちゃんと話をして、莉桜菜のお母さんに理解して受け入れて貰わなければならないと俺は思った。
そうしないと、後で、きっと後悔してしまう。
「こんなもの、と言いますが、これは、莉桜菜さんが本当に叶えたいことばかりです。俺は、その一つ一つを出来れば叶えたいと思っています」
「・・・元気なれば出来ることばかりじゃない」
「はい、そうです。全部、元気になれば出来ます」
「なら、これは、必要のないものでしょう?」
莉桜菜のお母さんは、俺にリストが書かれた紙を返してきた。


