季節は、秋も深まり、着る服は冬服にすっかり替わってしまった。
日中はまだ暖かいのだが、外に出るときは上着が欠かせない。
個人的には冬は寒いが好きだ。
着込めば良いし、冬の空気の冷たさが心地良いとも感じる。
俺は、ギターを肩に担ぎ、俺は光平が来るのを待っていた。


今日は、オーディションの日だ。
この日のために練習して、人に見せられるだけの状態まで持ってきた。


喉のコンディションは良好だ。
緊張して、指が震えすぎない限り、手もきっと動いてくれるだろう。


「とうとう、やってきたな・・・」


オーディションなんて自分が受ける日が来るなんて思ってもいなかった。


「真司!」


名前を呼ばれて、声の方を見れば、同じくギターを抱えて走ってくる光平の姿があった。


「光平」
「悪い、遅くなった」
「いいよ」


肩で息をしながら光平は息を整える。


「大丈夫か?」
「もちろん」
「じゃあ、いくか」
「あぁ」


俺たちは肩を並べて、歩き出した。
オーディションがある場所は、意外に近い場所だった。
もしかしたら、レコード会社が配慮してくれたのか、支社があるのかは分からない。
時間は、1時間後。
余裕で間に合う。


「真司、声の調子は?」
「問題ないよ。光平は?」
「俺も・・・手も」
「あぁ・・・緊張するな」
「緊張する・・・本当、ありがとうな」


横目で光平を見れば、彼はまっすぐ前を見ている。
でも、その目は輝いているように見えた。