明日、莉桜菜に報告だ。


「母さん」
「なに?」
「ありがとう」
「あんたからお礼なんてね」
「・・・」
「まぁ、莉桜菜ちゃんのやりたいこと叶えてやりなさい」
「あぁ」


母さんは、テレビを見ながら、なにか面白い番組がないかとリモコンで変えている。
俺はその姿を見ながら、俺自身も言わなければいけないことを思い出した。


「・・・母さん」
「なに?」
「俺も言いたいことがあるんだけど」
「なに?テストで赤点でも採ったの?」


母さんは、テレビから目を離して俺の方を見た。


「赤点・・・なんでだよ」
「だって、そんな真面目な顔して言うから」
「赤点は採ったことないから」
「あら、そうだったかしら?・・・・それで?」
「あぁ・・・来週、光平とオーディション受けに行くことになった」
「は?オーディション?」


母さんの頭にいくつものクエスチョンマークが並んだ。
その反応が普通だよな。
俺は苦笑する。


「歌の、オーディション」
「それで?オーディション受けてどうするの?」
「受かるかどうかなんて分からないし、どうなるかも分からない。でも、光平が受けたいって言って、俺もそうしたいと思った」
「そう、」
「その先の事なんて全く分かんないよ・・・でも、動かなきゃどうもなんないし、挑戦してみたいって思った」


俺の話を聞いていた母さんは、「ふーん」と鼻で相槌を打つ。