莉桜菜がしたいと思うことを叶えるとは言ったものの、それは病院の中で出来る範囲と決めた。
何かあってもすぐに対応出来るようにと俺が提案した。
莉桜菜は、不満そうな顔をしていたが、外出なんかして彼女の残りわずかな寿命を削りたくなかったからだ。
そんなことを莉桜菜に言うわけはなく、俺が断言すれば、彼女は渋々頷いてくれた。


まず、なにがしたいかと聞いたら、振り袖を着たい、と彼女は言った。


「振り袖?」
「そう、振り袖・・・成人式みたいに華やかなのを着てみたいの」


莉桜菜は、そう言うと持っていた雑誌を俺に渡してきた。
去年の12月号の有名な女性雑誌で、色とりどりの振り袖を着たモデルがたくさん載っていた。
髪の毛も化粧もバッチリだ。


「成人式、私出られないから・・・せめて、こんな風に綺麗にかわいくしてみたいの」


「・・・」


俺は、雑誌と莉桜菜を交互に見た。
振り袖は、きっとレンタルすればいいだろう。
でも、髪の毛をいじるのなんて男の俺が出来るわけもない。こういうのはプロがするからこそ綺麗になれるのだ。
誰かに頼んだら出張とかしてくれるだろうか?
悶々と雑誌と睨めっこしながら考えていると、莉桜菜はおずおずと声をかけてきた。


「難しいかな?」

「あ・・・いや・・・」

「無理なら、諦めるよ」


そう言って莉桜菜は苦笑した。
でも、その表情は残念の一色に染まっていた。