莉桜菜は、顔を上げて涙で濡れたまま俺を見上げた。
そして、何故か笑みを浮かべた。


「莉桜菜?」

「私ね・・・・決めたんだ」

「決めた・・・?」




「もうね、苦しいことはしないって」
「え?」
「治すために薬を飲んだら苦しくなる・・・それは、一度経験していてもう二度と同じ目にあいたくない・・・」
「でも、それは、治るためには仕方のないことだろう!」


俺は、声を荒げた。
莉桜菜が言っていることを理解できなかったからだ。
苦しいのが嫌だから、苦しくなることはしない?
だから、治療を受けないと言うことだろう?
治療しなければ、莉桜菜を蝕んでいる病気は治らない。
風邪みたいにすぐ治るものではないのだ、放って置いたら命の危険に関わってくる。


「・・・・治る、なら、ね」
「!!」
「治るなら・・・頑張っていたかもしれないね・・・」


その言葉が、答えを出していた。


「治るなら・・・頑張っていた?」

「・・・」

「手術しても?治らないって・・・頑張る意味ないって?」


俺は、確認するように一つずつ聞いていく。
莉桜菜は、小さく頷く。
また、涙が粒になって零れ落ちた。


俺の目からも涙が零れた。


信じたくなかった。
嘘であってほしかった。