莉桜菜の家が見えてきた。
家の前で足を止めると、塩田と書かれた表札を確認してから、チャイムを鳴らした。
少し待つと、ガチャッとドアが開いて莉桜菜のお母さんが姿を現した。
「どちらさま・・・あ、あなた・・・」
「こんにちは。吉田です。手紙を届けに来ました」
軽く頭を下げて挨拶をする。
俺は鞄から担任から預かった手紙の入ったファイルを取り出すと、莉桜菜のお母さんに手渡した。
「まぁ、わざわざありがとう」
「いえ・・・」
「こんなところまで来てくれてごめんなさいね」
「気にしないでください・・・あの、」
「え?」
「莉桜菜さんは、元気ですか?」
お母さんに様子を聞いてみた。
俺の言葉に、お母さんは一瞬目を見開いて、次いで悲しげな表情に変わった。
「あの子は、あなたには話したの?」
「え?検査入院のことですか?」
「あぁ、そこまでしか話していないのね・・・」
俺はお母さんの言葉に引っかかりを覚えた。
そこまでしか?それはどういう意味だ?
何か莉桜菜は隠していることがあるのか?
「どういうことですか?」
「あぁ、気にしないでこちらの話よ。莉桜菜は元気よ。あと少しで帰ってくるわ」
そう言って言い繕うお母さんに、俺はその言葉が嘘にしか聞こえなかった。


