それに公園は通学路の途中にあった。
少し寄り道するくらいなんてことない。
莉桜菜が少し先を歩いて、俺たちは公園にやってきた。
莉桜菜は他所を向くことなくまっすぐ桜の木の前に行った。
「まだ、咲かないなぁ・・・」
桜の木を見上げながら、莉桜菜は呟いた。
桜の花が咲くのは、まだまだ先のことだ。
「まだ、咲かないだろうな」
「だよねぇ・・・」
目を細めて、莉桜菜は桜を見上げながら何を思っているのだろうか。
「どうかしたのか?」
「ん?」
「何かあったか?」
莉桜菜は、顔は上に向けたまま、目だけ俺の方を見た。
それから、彼女の目から一筋の涙が零れた。
「何もないよ?ただ・・・桜の花が今、見たくなっただけ」
「・・・」
莉桜菜は嘘をついている。
涙が出ていることに気づいていないのだろうか?
明らかに、何かあるとしか思えないのに。
「・・・俺は、そんなに信用ならないか?」
「え?」
「そんな、泣いて、何もないとかわかりやすい嘘ついて」
「あ・・・」
莉桜菜は、慌てて自分の頬に指で触れる。
やっぱり涙が零れたことに気づいてはいなかった。
自分の涙で濡れた指先を見て、莉桜菜は苦笑した。
「ハハ、・・・」
「莉桜菜?」
「なんかおかしくなって・・・真司君を信用していないとかはないよ。・・・本当は言いたくなかったんだけど、実はしばらく学校を休むことになってね」
「え?」
「さみしくなっちゃって」


