莉桜菜のいない学校での一日はいつも以上に長く感じた。


「塩田が休みで寂しいな?」
「・・・は?」


ようやくやってきた昼休み。
珍しく、俺は全に昼食一緒に食べないかと誘われた。
教室で、机を向かい合わせにして弁当を広げる。
俺は、母さんが作ってくれた弁当で、全はコンビニで買ったパンだった。
他愛ない話をしているときに急にぶっこまれて俺は一瞬何を言われたか分からなかった。


「だって、塩田の席よく見てるし?なんかいつもより元気ない気がするし?」


全は、ニヤニヤと意地の悪そうな笑みを浮かべながらパンを頬張った。


「別に、そんなことない」
「へぇ?そうか?」
「何だよ」
「いやー塩田効果ってすごいんだなーと」


言っている意味が分からない。
莉桜菜がいなくたって別にどうってことない。
休みなのは仕方のないことだし、俺たちは恋人同士というわけでもない。
ただ、一緒に登下校してたまに遊ぶ。そして、たまに河原で俺たちの歌を聴いてくれる。
それだけの関係なんだ。
この関係に名前をつけるならば、きっと『友人』だろう。


「なー吉田、5限目の宿題してきたか?」
「それなりに」
「後で答え合わせしてみようぜ。なんか不安でさ」
「別に良いけど・・・」
「よし、」


全は、ニカッと今度は爽やかな笑みになった。
コロコロと表情が変わって忙しそうだ。
でも、こんな奴は友だちも多いんだろうなーと思った。