「彼は・・・?」
「あ、吉田 真司君。色々助けてくれる友だちだよ」
「あぁ、キミが・・・」


両親は俺を見て、意味深に頷いた。
俺は、よく分からなかったが、とりあえず頭を下げただけにした。


「じゃあ、行ってくるね」


莉桜菜は、両親に手を振ると、歩いて行ってしまった。
俺はその場に残されてどうしようか迷う。
どう動けば良いんだろう。
莉桜菜と一緒にあっちに行けば良かったかな。


「吉田・・・真司君と言ったかな」


莉桜菜の父が俺に話し掛けてきて、俺はスッと背筋を伸ばした。


「は、はい」
「そんなに緊張しなくていいよ。莉桜菜がいつもキミの話を聞かせてくれていた」
「俺の話・・・ですか?」
「あぁ、それにこの前倒れたときキミが助けてくれたんだってね」
「毎日一緒に学校に行ってくれているって」


莉桜菜の母も笑みを浮かべながら俺に声を掛けてくる。
その笑みは、莉桜菜にとてもよく似ていた。


「そんな・・・」


こんな時、なんと言えば良いんだろう。
誰か、言葉の例を教えてくれ。


「ありがとう。キミが莉桜菜の側にいてくれて良かったと思っている」
「そんな、お礼を言われるほど・・・」
「いいえ。私たちはあなたのおかげで安心して莉桜菜を学校にやれているんだから」


そんな特別なことをしているわけじゃない。
莉桜菜の両親のここまで言われる理由なんてないし、むしろお礼を言いたいのはこちらの方だ。