退場すると、選手はそれぞれテントに戻っていく。
俺は、莉桜菜に話し掛けようと口を開ける前に、違う声が莉桜菜の名前を呼ぶ。
「莉桜菜!」
「あ、お母さん」
1人の女性が、莉桜菜に駆け寄ってくる。
その後ろには男性もいた。
2人は莉桜菜の側に来ると、その体を支えるように寄り添う。
「大丈夫なの?」
「もちろん、大丈夫」
「障害物競走も終わったし、帰るぞ」
「え、お父さんまだ終わってないよ」
どうやら莉桜菜の両親のようだ。
2人は、莉桜菜の体の心配をしている。
「何が終わっていないんだ?お母さんからは障害物競走のことしか聞いてなかったけど」
「言ってなかった?女子は応援団があるんだよ?」
「応援団?そんなの別に良いだろう」
「そうよ、それは他の子に任せて」
2人は、莉桜菜を説得しようと色々と言っている。
莉桜菜は、2人に言われながら、チラッと俺の方を見た。
「でも、ごめん。これだけはやりたいんだ」
「莉桜菜・・」
「お願い、ほら、もう少しで応援団の時間だし、そんな長い時間する物でもないからさ」
そう言って莉桜菜は笑った。
2人は顔を見合わせると、困ったように眉を下げた。
「全く、あんたって子は・・・」
「ごめんね」
莉桜菜は、両手を合わせて両親に謝っている。
そして、「応援団の準備してくる」と言うと俺の方を見た。
「じゃあ、真司君応援団見ててね」
「あ?あぁ」
まさか俺に話を振られるとは思わなかったから返答が遅れてしまった。
両親の視線が俺の方に向かれる。


