「やっぱり、真司が唄うのがいいな」
「そうか?」
「あぁ、・・・作って良かったよ」
満足そうに笑みを浮かべる光平を見て、光平がそう思ってくれるならいいか、と思った。
改めて楽譜を見て、歌詞を読む。
光平の恋に対するありのままの気持ち。
恋ってこんな風に思うのか。
今さっき一緒にいたはずなのに、すぐにまた会いたくなる。
今何をしているのか、誰とどこにいるのかを知りたいと思うこの気持ち。
俺が今まで感じたことのない感情ばかりだった。
「これ、俺たちの一曲にしてもいいか?」
「光平が作った曲だろ?もちろん良いに決まっているだろう」
「良かった。・・・どうよ?これ、莉桜菜ちゃんに唄ってやるのって」
「え?なんであいつが今出てくるんだよ」
すると、光平は急に目を丸くした。
光平がそんな反応するなんて思っていなかったから、逆に俺は驚いてしまった。
「え、お前本当に言ってんの?」
「は?」
「えー・・お前、あほだな」
「喧嘩売ってんのか?」
酷い言いぐさじゃないか。
俺は本当のことしか言っていないのに。
この曲を莉桜菜に歌ってやるなんて、別に俺は彼女に恋しているわけないし。
「あーあ、お前損してるなー」
「意味分かんないんですけど」
「ーーーま、いずれ分かるさ」
勝手に光平は納得して、俺の肩を同情を込めた手を置く。
釈然としないまま、俺はそれを受け入れながら、光平の言葉が理解しきれなかった。


