「出来たのか」
楽譜を受け取って、俺は譜面を眺める。
4ページくらいある曲だ。音符ではなく、歌詞を読んでみればなんと、恋の歌だった。
「これ、光平が書いたのか?」
「なんだよ?らしくないってか?」
「いや・・・」
正直、光平が恋の唄う歌詞を書くなんて想像していなかった。
「俺だって最初は恥ずかしいと思って何度も破って捨てたさ・・・でも、やっぱり俺の中に燻っていた思いは、溢れるばかりだったからさ・・・やっぱりこれだって書いてみたんだよ」
「そうなのか・・・」
恋を唄う歌。
それは、まっすぐに光平の気持ちが表れている。
今、光平には彼女がいて、その彼女に対する気持ち、自分の考え、こうありたい・・・短く表現することは難しかっただろうに、それを光平をやってのけたのだ。
プラス音も作っている。もう、立派なアーティストだと俺は思った。
「どうだ?」
「すごいと思うよ」
「じゃなくて・・・歌えそうか?」
そういえば、光平は歌ができあがったら俺に唄ってほしいと言っていたことを思い出した。
「俺が・・・唄うのか?」
「絶対、お前に唄ってほしい」
莉桜菜に似たキラキラとした目で俺を見てくる。
なんだか、そういう目には逆らえないような気がするのは気のせいだろうか。
俺は、無言で楽譜と光平を交互に見た。
とりあえず、楽譜を見える場所に置いて、ギターを構える。


