キミに伝えたい言葉がある



「優しすぎるなぁー・・・て」
「・・・今日だけ特別だ」
「そっか」


莉桜菜はあっさり納得して頷いた。
俺ってそんなに優しくないだろうか?
今までの自分を振り返ってみると、莉桜菜に対して優しく、といった態度を取ったことは少ないかもしれない。
そもそも、優しくするってなんだ?


「ねぇね、今日は歌、歌いに行く?」
「行くかもしれないが・・・来るなよ?」
「えー?」


こう聞いてくるときは、大体、河原まで来ている。
普段ならまたか、と思いつつも本人がやりたいようにさせているが、今日はそうはいかない。
万全でない体調の時には、あまり外をうろつくのは体に悪い。


「行くかもしれないが、行かないかもしれない。そんな曖昧で、しかも体調が万全じゃないんだ・・・家で寝てろ」
「えー」


莉桜菜は納得いかない、といった体だ。


「また、救急車呼ばれるぞ」
「それは、イヤ」


渋い顔をした莉桜菜に、この言葉は有効だと頭にインプットした。
まぁ、救急車に何回も乗りたいと思う人はいないと思う。
俺だってお世話にはなりたくない。


「家でゆっくりするんだな」
「・・・はーい」


仕方ない、と莉桜菜は肩を落としながら頷いた。
俺は、その姿を見てよし、と納得した。
病み上がりの人間が出歩いていると、こっちだって気が気じゃないんだ。