その日は、クラスメイト1人1人が莉桜菜を気遣っていて、彼女がいかにクラスに馴染んでいるか交友関係を深めているかが分かった。
「みんな大げさだよー?」
「いいじゃん、今日くらいみんなに甘えなよ」
「ふふ、そうする」
女子に色々と世話をされて莉桜菜は、申し訳なさそうにしながらも嬉しそうだった。
一日そんな風に過ごして、帰りはなぜかいつも一緒にいる絢が俺のところに来た。
「はい」
絢は、不満たらたらな表情で、俺に一つの鞄を渡してきた。
「莉桜菜の、あんた持って」
「あ、ちょっと絢ちゃん?」
莉桜菜が慌てて俺のところにやってきた。
俺から自分の鞄を取ろうとしたが、俺は渡さなかった。
「本当は、あんたにこんなこと頼みたくないけど、あたしはこれから部活だから・・・仕方なくよ」
そう言って、絢は俺を睨み、そして莉桜菜に1回抱きついてから後ろ髪を引かれる思いで何度も何度も振り返りながら部活に行った。
「真司君、なんかごめんね」
「何が?」
「なんか、色々・・・」
「気にしてない・・・帰るぞ」
俺は、自分の荷物と莉桜菜のを持って教室を出る。
莉桜菜は、隣に並んで歩きながら、何か言いたげに俺を何回か見てきた。
でも、何も言わずに視線を戻す。
それを何度か繰り返しているときに俺から聞いてみた。
「なんか言いたいことでもあるのか?」
「え?」
「何か言いたげに見てくるから」
「いや・・・なんて言うか、本当に真司君かな?って思って」
「は?」
いきなり何を言うかと思えば、意味の分からない言葉だった。


