次の日、莉桜菜はいつもの場所に立っていた。
「おはよう、真司君」
「おはよう・・・大丈夫なのか?」
「うん、昨日はごめんね?先生に聞いたんだけど私を運んでくれたって」
「それは、気にしなくて良い・・・本当に大丈夫なのか?」
莉桜菜の頭の天辺から足先まで見る。
外傷とかはないが、本当に大丈夫なのか心配になった。
「ふふっ大丈夫、軽い熱中症だろうって。点滴して休んだから今日は元気」
「なら、いいけど・・・」
俺たちは、並んで学校に向かって歩き出した。
ふと、思い当たって莉桜菜が持っている鞄をさりげなく持ってやる。
「あれ?」
「重いだろ」
「ふふ、大丈夫なのに・・・ありがとう」
「別に」
鞄の中には今日の授業の教科書などが入っている。
教科書は中々分厚いので軽くはない。
「ね、真司君」
「何?」
「私、重くなかった?」
莉桜菜を見てみると、少し恥ずかしそうにしていた。
こういうときって、重くても重くないという場面だと思う。
しかし、社交指令なしにしても、あのときの莉桜菜は、まるで羽が生えているかのように軽かった。
「重くなかった・・・飯、ちゃんと食べているのか?」
「え?」
「それくらいに軽かった」
「・・・ふふっ」
本当のことを言うと、莉桜菜は笑い出した。
ひとしきり笑うと、笑顔のまま俺を見上げた。
「真司君に心配される日が来るなんて思っていなかったよ」
「は?」
「優しいね」
カッと自分の顔に熱が集中した。
恥ずかしさで顔が熱い。


