窓際の一番前から三番目という高本くんの隣の席にいるタケモリへ視線を送り、

視線に気づいた彼に向けて廊下を顎で示したのは、

四限目の授業終了と昼休み開始を意味するチャイムが鳴る中、

微かな緊張感から開放された直後だった。

「タケモリ、行け」と口の動きで告げる。

彼は盛大にため息をつきそうな顔で席を立ち、大股で教室を出ていった。

タケモリを追うようにこちらを向いた高本くんと目が合う。

「お昼なに?」

口の動きで尋ねるが、三度伝わらなかったところでこちらから席を立った。


「やあ坊や」

首の前に腕を通し、右手で左肩に触れると、「いや、俺金持ってないっす」と返ってきた。

「将来豪邸に住むのが夢だけど、よくない方法で得たお金に興味はないよ」

言いながら腕を解くと、「あったら困るよ」と高本くんは笑った。

「で、高本くんお昼なに?」

「ああ、お昼か。オイルなにって訊かれてるのかと思った。なんのオイルだろうと思って」

「オイル……我が家にあるのはオリーブオイル」

「ああ、うちも」

「意外と庶民的だね」

だから庶民なんだよと高本くんは苦笑した。

直後、自らの発言を悔いた。

普通でありたい、という彼の言葉を思い出した。