その瞳に写る頃


わたしが至極色のスニーカーを入れた右隣の下駄箱へ、ショウゾウは黒のローファーを入れた。

廊下へ二人同時に上履きを放った音は、実際はそれなりのものなのだろうが、多数の生徒の声の中ではそれほど大きくは聞こえなかった。


わたしたちが互いをショウゾウ、サクゾウと呼ぶようになったのは、わたしが幼少期、父にサクゾウと呼ばれていたことがきっかけだ。

高校入学から程なくして仲よくなったショウゾウに父からサクゾウと呼ばれていたことを話すと、

おもしろいね、ならわたしもそう呼ぶと言って、ショウゾウからサクゾウと呼ぶようになった。

それに対抗するようにわたしもショウゾウと呼ぶようになり、それが浸透したのが現在の形だ。

こうなってからはきちんと名前で呼ぶ方が珍しい。


「そういえばさ、彼氏がいる人って楽しいのかな?」

ショウゾウはパスケースを振り回しながら言った。

パスケースに描かれている弓矢を持った鋭い目つきのヤモリは、少し前――わたしが中学校を卒業する頃に爆発的人気を誇った絵本のキャラクターだ。

ヤモリのモリくんという名前らしいそのキャラクターは、見かけによらず仲間のためならばなんでもするような優しい性格の持ち主らしい。

当時は、あんな恐ろしい見た目のキャラクターがうけるとは世の中なにが起こるかわからないものだと再確認した。

わたしの中で絵本のキャラクターといえば、見た目も中身も愛らしいイメージだった。